論文のテーマ設定について
How do I decide the research theme?

 学生と教員の興味が一致する研究テーマを、数回の議論の中で決めていきます。研究室にはいくつかの研究の柱があり、そこからテーマを選ぶこともできますし、オリジナルのテーマで研究を進めてもよいですが、いずれにせよ、学生自身が興味を持ってその研究に取り組むことが重要です。研究に必要な知見(関連する論文や書籍)や技術などは、ゼミや個人面談、講義や演習を通じて可能な限り提供します。
 研究のアプローチはテーマに応じて様々であり、一例として、GISを使った空間分析、アンケートやインタビューなどによる社会調査・心理調査、現場での人間行動観察調査、毎木調査などの植物生態調査、温湿度・風・土壌などの環境調査、歴史資料等の文献調査などが考えられます。寺田研ではいくつかのアプローチを組み合わせて応用的な研究を行う場合が多いです。

 興味をお持ちの方はぜひ一度ゼミ見学や指導教員との面談にお越しください。研究室メンバーの研究テーマ(こちら)も参考にしてください。

ランドスケープ計画
Landscape Planning
環境・社会・経済が調和した健全な都市・地域の形成に向けて

 
 ランドスケープ計画の目的は、その都市の自然環境や生態系を読み解き、都市計画や地域計画に活かすことで、環境・社会・経済が調和した持続可能な都市・地域を形成に資することにあります。今後人口減少を本格的に迎える日本の都市では、その備えとして、市街地を計画的に小さくし、インフラの維持コストや環境負荷を低減する「コンパクトシティ」政策が主流となっています。都市を小さくするということは、その分自然的な土地利用が増えるということでもあり、コンパクトシティ政策とランドスケープ計画との連動(≒グレーインフラとグリーンインフラの融合アプローチ)が強く求められます。また単にグリーンインフラを増やせばよいのではなく、それが社会的に意味のある「場所」であることも重要な視点です。学術の立場からは、こうした計画論を支える地道な研究を、様々なアプローチで積み上げることが重要と思います。
 

   Kamo river, Kyoto, Japan (Photo: T. Terada)

 

生態系の機能を活かした都市・地域計画
Ecosystem-based urban and regional planning

  • コンパクトシティとグリーンインフラの概念統合に関する理論研究
  • 地形に対する土地利用の適正評価
  • グレー/グリーインフラ双方による小流域単位の水収支

 

自然的土地利用の動態や生態系への影響
Temporal dynamics of informal openspaces and its impact to ecosystems

  • 郊外戸建て住宅地空閑地の利用実態や暫定性の解明
  • 都市の野生動物の目撃分布と土地利用との関係
  • 北米の空き地管理プログラムの横断的整理
  • 在来植物を用いた空き地の植物景観の管理

 

社会的公正からみた緑地・オープンスペースの評価分析
Evaluating green & open spaces from a social qruity point of view

  • 体験の豊かさからみた都市O.S.の評価
  • 任意活動・社会活動が行われる行動および空間の条件
  • コミュニティガーデン支援制度の横断的整理
  • Green Gentrificationからみた昨今の都市部の土地利用変化の課題

 


アーバンフォレストリー
Urban Forestry
都市の樹木と樹林地を統合的に捉えて構想する

 
 アーバンフォレストリーは北米・欧州を中心に1990年代から用いられるようになってきた計画概念で、都市におけるあらゆる樹木と樹林地をひとつの森として一体的に捉え、その維持管理・創出について、都市全体で戦略的な構想を立てることを狙いとするものです。日本では街路樹、公園の植栽木とで管理責任が異なり、また民有地も多いことから、都市の樹木・樹林地について一元的な取り扱いができていません。しかし、樹木の老齢化により都市部の樹木・樹林地の管理・更新が課題となり、周辺環境も変化し気候変動への対応も求められていることから、個々のデータを統合し、都市全体で構想を立てることが必要です。その際、庭園、里山、屋敷林、鎮守の森といった古くから存在する樹林地の役割を明確にすることが、日本独自のアーバンフォレストリー構想につながると考えています。 
 

 Hibiya park, Tokyo, Japan (Photo: T. Terada)

 

都市の樹木・樹林地の一体的管理・計画
Integrative planning and managemennd of urban forests

  • リモセン画像と土地利用データによる都市の樹冠抽出と分類
  • 都市の樹木・樹林地の社会的・生態的・経済的特性に関する文献レビュー
  • 剪定枝の発生量と処理に関する実態と課題の解明
  • 世界のアーバンフォレストリー構想の横断的整理

大学キャンパス内樹木の生態系サービスの評価
Ecosystem services of the trees in a university campus

  • iTreeによるキャンパス内樹木の生態系サービス評価
  • キャンパス内大径木の生態系サービス、植栽基盤、健全度の総合評価

民有地の樹木・樹林地の維持管理
Sustainable management of the trees in private properties

  • 開発年代からみた郊外戸建て住宅地の庭木の動向
  • 里山管理団体の樹木に対する知識とその伝達
  • 計画住宅地の住民による樹木の生態系サービスの認知

 


都市農業
Urban Agriculture
農の風景が息づくみどりのまちづくり

 
 都市農地は環境・社会・経済面で様々な機能を持っています。また食料生産にも資することからフードシステムの構成要素となっており、緑地の中でも独特な位置づけにあります。日本では、数世紀続く生産者の営農努力により現在でも多くの農地が都市に残され、多種多様な農作物が生産され、その多くが直売所などを通じてローカルに消費されています。こうした「農のあるまち」が都心からそう遠くない場所で見られることは世界的にみても貴重ですが、都市農地の永続性は必ずしも保障されていません。昨今では都市計画分野でも「都市と緑・農が共生するまち」が将来都市像に位置付けられ、緑地計画(緑の基本計画)でも農地を扱うことが義務付けられています。数十年後に「農のあるまち」が失われないように、計画策定や取り組みの推進につながる知見を着実に積み上げる必要があります。
 

Nerima, Tokyo, Japan (Image: GSI) 

 

都市農地保全の計画的展開に向けた空間評価
Spatial analysis for urban farmland conservation

  • 都市農地の残存・転用に関する時系列分析
  • 緑地としての農地評価にもとづく保全優先度の解明

CSAによる都市農業振興・都市農地保全
Promoting urban agriculture and conserving urban farmland by CSA

  • まちづくり団体による都市農業支援の展開
  • 農家との交友や地産地消の支持と都市農地保全意識との関係

 

都市農業のフードシステムの地理的・計量的把握
Geography of food systems in urban agriculture

  • 直売所の規模別分布と農作物流通量の把握
  • 伝統野菜生産の地理的・時系列的変化

 


文化的景観
Cultural Landscape
土地に対する営みの表象としてランドスケープを捉える

 
文化的景観は地域住民の土地に対する営みの積層が表出したものであり、その地域の文化的重層性を表現する生きた文化財です。地域固有の文化をよく表現するものは文化的景観としての価値が高く、「重要文化的景観」に指定され、政策的な保全(営みの維持に対する支援など)が図られています。こうした優れた景観がどのように形成され、どのようなメカニズムで維持されているのか、維持のインセンティブとなり得る環境面・社会経済面での優位性は何なのかを明らかにすることは、日本固有のランドスケープの保全に対して有用な知見になります。市街化が進んだ都市のほうが、農村よりも景観の変化が大きいですが、それでも維持されている文化的景観は存在しており、その保全を考えることは、土地固有の文化を表出させる土着的な景観まちづくりに繋がります。
 

Yuno, Yamaguchi, Japan (Photo: T. Terada)

 

都市部の文化的景観
Cultural landscapes in urban areas

  • 園芸文化の表象としての路地空間
  • 都市の「坂」の文化と景観変化
  • 庭園の消失と継承

農村の文化的景観
Cultural landscapes in rural areas

  • 果樹産地の景観形成とその変化
  • 植木産地の形成とその変化

 


サステイナビリティ研究
Sustainability Sciences
地球環境の持続可能性を探求する

 
 サステイナビリティ学とは地球環境の持続性を追求する学際的な学問分野です。新領域創成科学研究科には、環境学研究系を学際的に横断する「サステイナビリティ学教育プログラム」が設置されており、サステイナビリティ学の体系化・深化が図られています。本研究室でも、環境学研究系の一員として、サステイナビリティ学の考え方を都市計画、ランドスケープ計画に応用する研究に取り組んでいます。都市計画学、ランドスケープ計画学はともに学際的で、扱う対象も幅広い分野ではありますが、より広い視野から都市・地域・緑地を位置付け、人類の共通目標に向かって何が貢献できるかを明確にする必要があると考えています。
 

©Landscape and Urban Planing Lab. 2019

 

資源の持続性からみる都市・地域
Evaluating city and region from a sustainability of resources

  • Ecological FootprintとBiological Capacityによる都市・地域の持続性評価

ネットゼロカーボンに社会に向けた森林・農地の評価
Evaluating forest and farmland as a carbon sink for net-zero carbon society

  • 里山のバイオマス利用とCO2排出削減/炭素固定
  • 森林の生態系保全とCO2吸収固定
  • 都市農業によるCO2排出と削減策

サステイナビリティの倫理と緑地とのかかわり
Ethics for sustainable society and its relation to urban greens

  • エシカル消費者の属性と緑地利用、農地利用との関係