ランドスケープ計画
Landscape Planning

社会・経済・環境が調和した都市・地域の形成に向けて

 
 都市のサステイナビリティを考えるとき、あらゆるオープンスペースや自然環境の総称としての緑地をどのように評価、計画、デザインするかは、歴史的にみても現代的にみても大きな課題です。そもそも緑地にどのような機能や価値があるのか。土地利用計画や地区スケールのアーバンデザインの中で緑地をどのように位置づけるか。社会的な包摂性や人々のWell-beingを高めるために緑地に何ができるのか。緑地(非建蔽地)の視点から将来の都市像を描けないか。動植物などのエコロジカルな要素を都市計画やコミュニティの中でどのように扱うか。これらの問いに研究や実践を通じて答えていくことで、社会・経済・環境が調和した都市のあり方を構想し、「ランドスケープ計画」の点からその実現手法を検討します。
 

  Kamo river, Kyoto, Japan (Photo: T. Terada)

 

自然環境を活かした都市・地域計画
Nature-based urban and regional planning

  • 都市の縮退を契機とする自然立地的土地利用への誘導
  • 日本特有の緑農住混在(モザイク)型土地利用の評価
  • コンパクトシティに代わる都市像の検討
  • ランドスケープ・リテラシーと防災意識
  • 森林環境税を活用した流域の上下流(もりまち)連携

 

土地利用動態と環境への影響
Landuse dynamics and its impact to ecosystems

  • 郊外住宅地の空閑地の動態や暫定性の解明
  • 緑地の継承・消失の決定要因
  • 物流拠点に注目した首都圏の土地利用変化
  • 在来植物による空き地の緑化
  • 野生動物と人間との接触地点と土地利用

 

社会的公正やWell-beingからみた緑地・オープンスペース
Assessing green & open spaces from well-being & social equity

  • 体験のケイパビリティからみた屋外公共空間の評価
  • 住宅のアフォーダビリティと公園へのアクセス性
  • 世帯収入と各種都市緑地へのアクセス性

 


アーバンフォレストリー
Urban Forestry

都市の樹木と樹林地を統合的に捉え構想する

 
 アーバンフォレストリーは北米・欧州を中心に1990年代から用いられるようになってきた計画概念で、都市におけるあらゆる樹木と樹林地をひとつの森として一体的に捉え、その維持管理・創出について、都市全体で戦略的な構想を立てることを狙いとするものです。日本の多くの都市では街路樹と公園樹木とで管理部署が異なっており、樹木に対して一元的な取り扱いができていません。また、民有の樹林地・樹木の持続性も大きな課題となっています。気候変動による樹木への影響も顕著になり、大径木の伐採更新も必要とされる中、日本の都市におけるアーバンフォレストリー戦略の策定は今後強く求められるようになるでしょう。その際、庭園、里山、屋敷林、鎮守の森といった古くから存在する樹林地の役割を明確にすることが、日本独自のアーバンフォレストリー構想につながると考えています。 
 

 Hibiya park, Tokyo, Japan (Photo: T. Terada)

 

都市の樹木・樹林地の一元的な把握と評価
Integrative planning and managemennd of urban forests

  • リモセン画像と土地利用データによる都市の樹冠抽出と変化
  • 剪定枝の発生量と処理に関する実態解明
  • 世界のアーバンフォレストリー構想の横断的整理
  • 大学キャンパス内の樹木の生態系サービス評価と管理

都市樹木・樹林地の機能や立地の評価
Functions and locations of urban forests

  • 樹種による街路樹の微気候緩和とデザイン
  • 鎮守の森や屋敷林の気温低減・騒音抑制と「奥」の効果
  • 立地環境からみた都市樹木の健全度評価

民有地の樹木・樹林地の維持管理
Sustainable management of privately owned urban forests

  • 開発年代からみた郊外戸建て住宅地の庭木の動向
  • 里山管理団体の植物に対する知識とその伝達
  • 計画住宅地の住民による樹木の生態系サービスの認知
  • 民有樹林地の確保と管理に関わる政策連携

 


都市農業
Urban Agriculture

農の風景が息づくみどりのまちづくり

 
 都市農地は社会・経済・環境面で様々な機能を持っています。また食料生産にも資することからフードシステムの構成要素となっており、緑地の中でも独特な位置づけにあります。日本では、数世紀続く生産者の営農努力により現在でも多くの農地が都市に残され、新鮮な農作物が生産され、その多くが直売所などを通じてローカルに消費されています。こうした「農のあるまち」が都心からそう遠くない場所で見られることは世界的にみても貴重ですが、都市農地の永続性は必ずしも保障されていません。数十年後に「農のあるまち」が失われないように、保全計画の策定やまちづくりによる都市農業支援につながる知見を着実に積み上げる必要があります。
 

Nerima, Tokyo, Japan (Image: GSI) 

 

都市農地の計画的保全に向けた空間評価
Spatial analysis for urban farmland conservation

  • 都市農地の継承・転用に関する時系列分析
  • 農地の生態系サービス評価にもとづく保全優先度の解明
  • 災害時の食力供給の点からみた都市農業のレジリエンス
  • 都市農業のカーボンフットプリント

CSAによる都市農業振興
Promoting urban agriculture by CSA

  • まちづくり団体による都市農業支援の展開
  • 農家との交友や地産地消の支持と都市農地保全意識との関係

都市農業のフードシステムの地理的・計量的把握
Geography of local food systems in urban agriculture

  • 直売所の規模別分布と農作物流通量の把握
  • 伝統野菜生産の地理的・時系列的変化

 


サーキュラータウン
Circular Town

人・モノ・カネの循環と地域固有のまちづくり

 
例えば里山が例によく挙げられるように、資源の循環的利用は古くから資源に乏しい日本の文化的な営みの一部でした。資源を一方的に消費するまちではなく、まちの外の農林業と地産地消でつながり、一定量のモノを自給し経済や人が循環するまち。これはメガシティの出現や産業のグローバル化以前はどこにでも見られるものでしたが、今や取り戻すべき目標となっています。日本において循環都市を考えるのであれば、大都市(シティ)よりも中小都市(タウン)により大きな可能性があります。循環都市の考え方を廃棄物の再利用に留めず、循環を通じた都市と自然/農林業との共生、そこに現れるその土地固有の文化や新たな人々の営みまでも含めることが重要です。これを「サーキュラータウン」とし、日本の中小都市の都市戦略のひとつに位置付けることを考えています。
 

Yuno, Yamaguchi, Japan (Photo: T. Terada)

 

サーキュラータウン構想と実践
Concept of the Circular Town

  • サーキュラータウンの定義と評価指標
  • サーキュラー活動の実態と参加者のWell-being
  • 竹炭の循環利用による竹林管理の促進
  • 空閑地を介した小規模物質循環システム

木質バイオマスエネルギーの地産地消
Local consumption of biomass energy

  • バイオマスエネルギー源としての里山の評価
  • 薪ストーブ利用者による薪の利用実態
  • 炭素排出や地域内経済循環からの日本のバイオマス発電所の評価
  • 都市における造園業由来の剪定枝の処理実態

第2の森林としての都市
City as the 2nd forest

  • 都市の木造建築による炭素貯留効果
  • 森林と都市の統合的炭素循環分析